会社の決算で赤字が出たときの法人税はどうなる?
法人は毎年「法人税」の計算を行い、申告と納付を行わなければなりませんが、税額は所得の大きさに対応しますので赤字の年度分は納める必要がありません。
ただし会計上の計算と税務上の計算とでは所得金額にズレが生じることもあるため、決算で赤字になったからといって安心はできません。また、法人税以外にも課税される税金はありますので一概に「赤字なら納税の負担がない」とはいえません。
要点を当記事にまとめましたので、ぜひチェックしてください。
赤字の場合は原則納付が不要
法人税は、個人における所得税に対応する税金で、法人による活動から生じた所得に対して課税される税金です。
所得税も法人税も所得が発生していることを前提に税額が計算されますので、所得がない、つまり利益が出ていない赤字決算の場合には納めるべき税額がありません。
法人税が所得税と異なる点といえば「税率」で、基本的には一定の税率が適用され、所得税のように累進課税(課税所得が大きいほど税率も高くなる課税制度)は採用されていません。一定額の納税が義務付けられているわけではありません。最低額の定めが設けられているわけでもなく、あくまで掛け算をするときの税率が一定なだけで、計算の基礎となる所得金額が0円なら税額も0円です。
赤字でも法人税が発生するケースがある
基本的に赤字決算なら所得金額0円ですので法人税も納める税額がありません。ただ、「会計上の利益」と「税務上の所得」を厳密に捉えて、税務上も赤字であることを確認しておくことが大事です。
会計上の利益 | 「会計」では、会社の経営状況・財政状況を決算書や財務諸表としてまとめることを目的とする。経営方針、経営上の戦略のために内部的に利用したり、取引先や株主が自社を評価するために利用したりする。 |
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税務上の所得 | 「税務」では、会社が納めるべき税金を計算することを目的とする。ここでの収益は「益金」、費用は「損金」として処理し、会計上の収益や費用と必ずしも一致はしない。 |
会計上は大赤字となったものが、税務上大きな黒字になるほど大きなズレが生じるわけではないものの、納付額が変動したり納付義務に影響したりする可能性は十分にあります。
そのため、決算で赤字になったとしても、慎重に法人税の計算を行うことが大事です。
赤字でも申告をしよう
赤字決算で、納めるべき法人税もないときは、無理に申告をしなくてもかまいません。ただ、ある年度において発生した赤字は一定期間に限り繰越しができ、その後の年度の黒字(所得金額)から控除されますので申告はしておくべきです。
※厳密には「欠損金」の繰越し控除。
今年度に1,200万円の赤字、翌年度と翌々年度に各1,000万円の黒字が出たとしましょう。今年度の法人税の課税所得はなく、翌年度においても赤字(欠損金)の繰越控除により課税所得をなくすことができます。さらに翌々年度も残った200万円分の赤字を繰越すことで課税所得を「1,000万円-200万円=800万円」まで少なくすることができます。
この繰越控除の適用を受けるには、赤字が出た年度において青色申告をしていないといけません。会社を立ち上げた当初など、黒字にするのがあらかじめ難しいとわかっていることもあるでしょう。そんなときでも繰越控除をするために申告に向けて備えておくことが大事です。
法人税以外の税金にも注意
法人が活動を続けるうえで発生する税金は法人税だけではありません。他にも「消費税」や「法人住民税」などの計算もしなくてはなりません。そしてこれらに関しては赤字であっても納税義務が発生するため、忘れることなく納付に対応しましょう。
- 消費税
所得の大きさに関係しないため、赤字でも納税義務が発生する。 - 法人住民税
- 法人税割:納付すべき法人税額に対応して金額が定まるため、赤字(=納付すべき法人税が0円)の場合は納税義務がない。
- 均等割:法人の規模によって金額が定まるため、赤字でも納税義務が発生する。
- 固定資産税
土地や建物、償却資産を保有する場合、その資産の価値(課税価格)に対応して固定資産税が課されるため、赤字でも納税義務が発生する。 - 法人事業税
原則として所得金額に対応して課税されるが、特定の業種や一定以上の規模に該当することで赤字でも納税義務が発生する。
このように、赤字であっても法人税以外の負担が発生することは十分に考えられます。決算で赤字になったとしても納税資金は確保しておき、納税の義務を履行できるように備えておきましょう。