法人税を滞納した場合どうなる? 延滞税や加算税の負担や納税猶予の制度について
法人にも納税の義務が課されています。消費税や住民税、固定資産税、そして法人税などが課税されますので、毎年その額を計算して、適切な時期に適切な税額を納めないといけません。
法人税の納付期限は「事業年度終了日の翌日から2ヶ月」と定められていますが、税務が追い付かない、あるいは納付すべき資金がないといった事情により滞納も起こり得ます。
滞納にはペナルティが伴いますのでできるだけ避けなくてはなりません。具体的にどのような事態が起こってしまうのか、ここで解説していきます。
法人税を滞納すると延滞税がかかる
法人税を期日までに納めない場合、「延滞税」が発生します。
延滞税は定額ではありません。延滞した期間に応じて大きく膨らんでいきますので、とにかく早めに対応することが大事といえるでしょう。
「どうせ間に合わないから後回しにしよう」などと考えて放置していると、企業の存続に関わるほど大きな損失を被ることになるかもしれません。
延滞税の大きさ
執筆時点(2023年)において、延滞税は、滞納した期間に応じて次のように定められています。
期限を過ぎてから2ヶ月間 | 次のいずれか低い割合が利率となる。 ・年7.3% ・特例基準割合+1% |
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期限から2ヶ月を過ぎた | 次のいずれか低い割合が利率となる。 ・年14.6% ・特例基準割合+7.3% |
具体的な金額は、各社の法人税の大きさにより異なります。
ただ、どの法人においてもいえることは「遅くとも期限から2ヶ月以内に納付を行った方が良い」ということです。
納付期限の翌日から2ヶ月を境に、延滞税の負担が大きく増してしまいます。
無申告・過少申告等がある場合の加算税について
単に納付が間に合わないだけでなく、法人税の申告すらしていないときは「無申告加算税」の負担がさらに加わります。
申告をしたものの、内容に間違いがあって本来の税額より小さい金額で申告をしてしまっていたときは「過少申告加算税」、所得の内容など、悪質な隠蔽があったときは「重加算税」の負担が加わります。
次のように、内容が悪質であるほど重くペナルティが設定されています。
ペナルティ | 適用場面 | 課税割合 |
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過少申告加算税 | 期限内に申告をしたものの本来より少なく申告してしまっていたとき。 | ・10% ・新たに納付すべき税額50万円までは15% |
無申告加算税 | 期限内に法人税の申告をしなかったとき。 | ・15% ・50万円超~200万円の部分には20% ・300万円超の部分には30%(2024年1月1日以後に適用) |
重加算税 | 法人税の計算に関わる仮装隠蔽があったとき。 | ・過少申告をしていたときは35% ・無申告であったときは40% |
なお、過少申告加算税や無申告加算税については、正当な理由があるならこれら加算税が不適用となるケースもあります。
ただし単に「業務が忙しくて対応が遅れた」といった理由で正当性が認められるものではありません。
無視を続けると財産を差し押さえられる
納付期限を過ぎるとペナルティとして上記延滞税・加算税の納付義務まで課されてしまいます。
さらに納付義務を果たさず放置を続けていると、最終的には会社財産を差し押さえられてしまいます。
強制的に没収され、換価処分され、滞納している税金分を徴収されてしまうのです。
ただし、滞納後すぐいきなり差し押さえられるわけではありません。いくつか段階を踏んだ上で差し押さえが実行されます。
まずは督促状が送付されますので、この督促が行われたときは危機感を持って早急に対応しましょう。
法人税の納付が難しい場合の対応
法人税の納付が難しいと思われるときでも正しい申告をすることは心掛けておきましょう。
無申告のまま放置したり、所得を隠したりしていると、非常に負担の重い加算税が加わり、事業者としての信用も失ってしまいます。
滞納しそうなときの対応としては、例えば次に紹介する「納税猶予の制度を利用すること」や「税理士に相談すること」を検討しましょう。
猶予制度で分割納付する
収入が減っているなどの事情があり法人税の納付が難しい場合、税務署で申請を行い税務署長の許可をもらうことで、分割納付を行うことが認められます。
そしてこの制度を利用したときは延滞税の負担も大きく軽減されます。
《 納税の猶予の条件 》
- 「利益が減ったなど著しい損失を受けている」ことや「災害、盗難等の被害にあった」ことなどを理由に、一時的に納付ができない
- 税務署に対して申請を行う
※窓口、郵送、e-Taxでも可能。 - 担保が提供されている
ただし次の場合は不要。
- 猶予を求める金額が100万円以下
- 猶予を求める期間が3ヶ月以内
- 提供できる担保がない
納税猶予の申請を行っている場合、許可された時期に関係なく、申請日から延滞税が軽減あるいは免除されます。
法人税の納付が難しい企業にとってありがたい制度ですので、延滞税を回避するためにも同制度の利用を検討しましょう。
税理士に相談してアドバイスを受ける
忙しい中小企業の方が税制について詳しく調査し、対応していくのは大変な作業です。間違った対応により延滞税等の負担を回避できなくなるおそれもあります。
前述の納税猶予の制度を利用するにしても、その他の対応を取るにしても、事前に税理士に相談することを検討しましょう。
「どんな制度が使えるのか」「どんなペナルティを課される可能性があるのか」など、プロの視点から的確なアドバイスをもらうことができるでしょう。
また、税理士を利用するときは早めの相談がおすすめです。法人税の計算から申告までまとめて対処してくれますし、早い段階で法人税納付に関する問題を把握することができます。あらかじめ納付すべき額もわかっていれば、滞納することのないよう資金計画を立てやすいです。
猶予を求めて申請を出し、延滞税を回避することもできるかもしれません。