法人税の基本的な計算方法を紹介!適用される法人税の税率や法人税に関する法改正に要注意
法人税の納付は企業に課せられた法律上の義務です。毎年正しく申告・納税を行わなければなりません。
税制は複雑で計算方法についてよく理解していない方も多いかと思いますので、ここで基本的な計算方法を紹介していきます。また、その他にも着目すべき税率のこと、法改正のことにも言及していきます。
法人税とは
法人税は、企業活動により得られる所得に対して課される税のことです。
所得税と似た概念といえますが、個人を対象とする所得税と異なり法人税は法人が対象であり、それぞれ別個の税目です。
ただいずれも所得に対する課税であり、事業を通して所得を得る法人、その経営者や内部の方は法人税について無視することはできません。
いかに売り上げを上げ、利益を大きくし、継続的な企業活動を実現するか、といったことのほか納税の義務を果たすよう適切な税務も遂行していかなければならないのです。
法人税の基本的な計算方法
法人税は所得に対して課税する税目ですので、その計算においては「所得金額」がポイントとなります。
そしてこの所得金額は、「益金の額」から「損金の額」を引いた金額と表現されます。
所得金額 = 益金の額 - 損金の額
益金の額とは、商品や製品などの販売、サービスの提供などによって得た売上収入、土地や建物などの売却収入などを含むものです。
一方で損金の額とは、販売費、売上原価、災害によって生じた損失などが含まれます。その他原材料費・人件費・減価償却費・支払利息・法人事業税なども損金の額として計算します。
つまり、収入が大きいほど結果的に納税すべき法人税も大きくなりやすいですが、どれだけ大きな収入を得ても支出した費用が相当に大きければ税負担は小さくなるのです。
上の計算式では所得金額が算出されるにとどまります。法人税額を導き出すには、この所得金額に法人税の「税率」を掛ける必要があります。
法人税額 = 所得金額 × 税率
法人税の最も基本的な計算の流れは以上の通りです。
ただ、実務では税務調整として利益金額に対する加算や減算が行われます。そうして法人税の計算で使われる正確な法人税法上の所得金額が算出されます。
さらに、税額控除に関しても忘れてはいけません。特定の事由に該当すれば一定額の減額がしてもらえます。この控除の適用可否も節税の観点では重要になってきます。
法人税の税率は法人の区分によって異なる
法人税では、法令により定められた法人の区分に応じて適用される税率が異なります。平成31年4月1日以降に開始する事業年度に適用される法人税の税率を例に見ていきましょう。
普通法人であって資本金1億円を超える場合であれば23.20%が適用されます。
これに対し、普通法人であって資本金1億円以下の場合、「年800万円以下の部分」については15%、「年800万円超の部分」に関しては23.20%と規模の大きな企業と同じ税率が適用されます。
なお、当該事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額が平均15億円を超えた「適用除外事業者」の場合、年800万円以下の部分について19%と比較的大きな税率が適用されるといった調整がされています。
その他細かく区分がわけられるとともに条件等が定められています。
大きな区分としては「協同組合等」「公益法人等」「人格のない社団等」「特定の医療法人」が設けられています。おおよそ23.20%以下で税率は設定されており、年800万円以下の部分に関しては15%など低い税率が適用されるようになっています。
そのため法人税の税率は基本23.20%と捉え、15%ほどにまで軽減される部分もある、と理解しておくと良いでしょう。
法人実効税率は低減傾向にある
現在では法人税の税率が23.20%ほどで設定されていますが、法人に適用される各種税率は低減の傾向にあります。
政府が「成長志向の法人税改革」を掲げ、平成27年度の改正以降、「法人実効税率」の引き下げを進めているからです。
※法人実効税率とは、企業の利益に対する税負担の割合のことであり、法人税のほか地方法人税・住民税・事業税なども考慮した値を指す
この改革は、法人課税につきより広く負担を分担する構造に変え、収益力の大きな企業の税負担を軽減、より大きな収益力への成長を促すことが目的とされています。
その目的を達成するためには単に税率を下げるのではなく「課税対象になる範囲は広げつつ税率を引き下げる」という構造の変革が必要です。
実際、この改革を推し進めたことにより改革前に37.00%であった法人実効税率は29.74%にまで下がっています。
法人税に関する改正には要注意
法人税に関わる制度は頻繁に改正がなされています。
根本的なルールの変更はそう行われるものではありませんが、細かな計算方法、控除等の制度は変更がよく行われています。そのため税務に関わる企業の方は、法改正にも追随していかなくてはなりません。
近年では令和3年度法人税関連法令の改正が行われています。同改正は、「法人税法」と「震災特例法」に対する改正となっています。
法人税法の改正としては以下に関する変更がありました。
- 減価償却・税額の計算方法
- 引当金・準備金の制度
- 資産譲渡等の場合における課税の特例制度
- 国際課税
例えば、試験研究を実施したときや給与などの支給額が増えたときに適用される特別控除制度の整備。そして近年注目されることも多い「DX」および「カーボンニュートラル」の取り組みを推進するための投資推進税制も新設されています。
国税庁のWebサイトから各種改正内容の詳細が記載された資料が公表されています。詳しくはこちらのページ(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2021/01.htm)も参考にすると良いでしょう。
税務のことは税理士に相談を
ここでは主に法人税のことに言及しましたが、企業が考慮しないといけない税目は法人税以外にも多数あります。
そして法人税だけであったとしても正しく計算するのは簡単ではありません。節税を考えるのであれば様々な税制の活用も必要になりますし、より高度な専門知識を備えている必要があるでしょう。適法に税負担を軽減したいのであれば税理士に相談し、税務の適正化を図りましょう。