相続税を申告しないとどうなる?罰則・ペナルティや生活への影響を解説
「相続税の申告をしなくてもバレないだろう」「そんな大金を受け取っていないし、たぶん申告をしなくても良いだろう」などと、安易な考えから申告を怠ってしまうケースもありますが、要注意です。
相続税の申告義務があるにもかかわらず手続きを行っていない場合、しばらく経ってからその事実が発覚し、ペナルティを受けることがあります。ペナルティの内容や、日常生活に及ぶ悪影響について当記事では言及し、申告をしないままでいることのリスクを解説していきます。
相続税申告の義務がある人とは
相続税申告の義務は、相続財産の総額が基礎控除額を超える場合に発生するのが基本です。
※厳密には、相続時精算課税を選択した場合など特定の制度を利用するケースなどでも申告義務が生じる。
基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。
たとえば、法定相続人が3人なら基礎控除額は4,800万円となり、相続財産がこの金額を超えないのなら相続税の申告義務は生じません。
しかし基礎控除額を上回る財産があるのなら、申告すべき法的義務を負います。そして申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月で、この期限までに申告書の提出および納税の両方を完了させなくてはなりません。
無申告で放置することで適用される罰則
申告義務のある方が手続きを放置していた場合、「無申告加算税」と「延滞税」、あるいは「重加算税」を課される可能性があります。
各罰則の内容を見ていきましょう。
無申告加算税
無申告加算税とは、申告期限までに申告を行わなかった場合に課される罰則的税金です。
申告のタイミングと本税の金額によって適用税率は異なり、次のように5%~30%までの幅があります。
税額区分 | 税率 | ||
---|---|---|---|
原則 | 調査通知前 | 調査通知後 | |
50万円以下 | 15% | 5% | 10% |
50万円超300万円以下 | 20% | 15% | |
300万円超 | 30% | 25% |
無申告のまま期限を過ぎてしまったとしても、税務調査の通知を受ける前に対応すれば税負担は比較的小さく抑えられます。そのため気が付いた時点ですぐに対応することが重要といえるでしょう。
延滞税
延滞税とは、納付期限から過ぎた日数に応じて発生する利息相当の税金です。
2025年度においては、期限翌日から2ヶ月以内の期間に対しては「年2.4%」、2ヶ月を超える期間に対しては「年8.7%」が適用されます。放置するほど負担が大きくなりますし、2ヶ月を過ぎるかどうかも負担を左右する大きな分かれ目となるため、早期の対応を心がけましょう。
重加算税
重加算税とは、意図的に財産を隠蔽したり虚偽の申告をしたりした場合など、悪質と認められる場合にペナルティとして課される税金のことです。
無申告に対する重加算税は、相続税額全体に対して「40%」という非常に重い税率が適用されてしまいます。
以前にも無申告加算税または重加算税を課されたことがある方だとさらに10%上乗せで「50%」まで引き上げられる可能性がありますので、財産を隠すなど税負担を不当に免れるための行動を起こさないようにしましょう。
生活への事実上の悪影響
無申告でいることによる影響は、税制上のペナルティの適用だけにとどまりません。
たとえば、場合によっては住宅ローンなど各種ローンに影響が及ぶ可能性があります。税金の滞納歴が審査に悪影響を与えることもあるでしょうし、借入時の審査に通りにくくなってしまいます。
また、相続税を納めず加算税等も納めずに放置し続けると、財産を差し押さえられてしまいます。強制的に給与や不動産などを差し押さえられて、自宅や車などを失うことになるかもしれません。
まずは申告の必要性を判定しよう
ここまでで紹介したように、相続税の申告を無視することはリスクが大きく、極力避けなくてはなりません。
そこでリスクを回避するためにも、まずは申告義務があるかどうかを的確に判定するところから取り組みましょう。
判定のために必要な情報は、各財産の相続税評価額と、法定相続人の人数の判定、相続税の計算方法、相続税に関する特例等の適用の有無、などです。金額が大きい場合や財産の種別が多岐にわたる場合、ご自身ですべて対処するのは難しいため、税理士にご依頼いただくことをおすすめします。
税理士が対応すれば早期に申告の必要性を判定できるとともに、正しい税額を期限内に納めてペナルティを受けるリスクも回避しやすくなります。