決算報告書の提出期限はいつまで?3つの期限を説明します
「決算報告書」は、企業の健全性や経営成績を評価するための手段となる、重要な書類です。決算報告書を作成したら各所に提出期限までに提出しなければなりません。
ここでは、決算報告書はいつまでに提出する必要があるのか、3つの重要な提出期限に焦点を当てて解説していきます。
決算報告書について
「決算報告書」は、会社の1年間の経営成績や決算日における財政状態をまとめた書類のことです。簡易的な言い方として「決算書」とも呼ばれることもあります。
代表的な決算報告書として以下のような書類が挙げられます。
- 貸借対照表(B/S)
- 損益計算書(P/L)
- キャッシュフロー計算書(C/F)
- 株主資本等変動計算書(S/S)
- 個別注記表
- 事業報告書
- 附属明細書
このように決算書にはさまざまな種類がありますが、この中でも特に重要なのが「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー計算書(C/F)」の3つであり、これらをまとめて「財務三表」と呼ぶこともあります。
決算報告書の名称と内容
一般的には決算報告書(決算書)と呼ばれることが多いですが、正式な名称は法律によって異なり、税法および会社法では「計算書類」、金融商品取引法では「財務諸表」と呼ばれています。そして、決算書の内容や対象の会社、提出先などもその根拠となる法律によって異なっています。
法律 | 法人税法 | 会社法 | 金融商品取引法 |
---|---|---|---|
名称 | 計算書類 | 計算書類 | 財務諸表 |
内容 | 貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書
| 貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書 個別注記表 計算書類の付属明細書 事業報告書 | 貸借対照表 損益計算書 キャッシュフロー計算書 株主資本等変動計算書 計算書類の付属明細書 |
対象 | 全ての会社 | 全ての会社 | 上場企業等 |
提出先 | 税務署 | 株主総会等 | 内閣総理大臣 |
決算報告書の提出期限
続いて、決算報告書の提出期限を以下の3つに分けて解説していきます。
- 法人税の申告期限(法人税法)
- 定時株主総会の開催期限(会社法)
- 有価証券報告書の提出期限(金融商品取引法)
法人税の申告期限
法人税の確定申告の期限は「事業年度終了の翌日から2ヶ月以内」と法人税法で規定されています。
内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
例えば、3月決算だと5月31日、9月決算だと11月30日までに税務署へ確定申告を行う必要があります。
決算日の2ヶ月後にあたる日が土曜日・日曜日・祝日等で税務署の閉庁日である場合は、その次の開庁日が期限となります。
なお、原則としては2ヶ月以内ですが、期限の延長が認められるケースもあります。例えば、定款に「定時株主総会の開催時期を事業年度終了後3ヶ月以内」と定めているときです。
株式会社は通常、事業年度終了後に定時株主総会を開催し、株主から決算書の承認を受けた上で確定申告を行います。しかし、会社法による株主総会の開催期限が「3ヶ月以内」であり、法人税の確定申告の期限「2ヶ月以内」との間でズレが生じます。その点が考慮され、特例として1ヶ月の延長が認められるのです。
特例を利用する場合は、「申告期限の延長の特例の申請書」を税務署へ提出し認められると制度が適用され、提出期限が1ヶ月延長されます。
申告期限は1ヶ月の延長が可能ですが、法人税の納付期限は延長されないことに注意する必要があります。
また、災害などのやむを得ない理由が生じた際にも、申告期限の延長が可能になることもあります。
定時株主総会の開催期限
次は会社法に基づく株主総会の開催期限についてです。
作成した計算書類は、監査役の監査を受けた後、取締役の承認を得て、定時株主総会へ提出します。
定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
定時株主総会は「事業年度終了後の一定の時期」として規定されていますが、実務上、事業年度終了後3ヶ月以内に開催されます。例えば3月決算だと6月30日、9月決算だと12月31日までに定時株主総会を開催します。
定時株主総会では、事業報告と計算書類の承認が行われます。また、必要に応じて役員の選任・解任や役員報酬の決定、定款変更などの決議も行われます。
有価証券報告書の提出期限
最後に、有価証券報告書の提出期限について見ていきましょう。
上場企業等は、財務諸表と、事業の概要や従業員の状況などのその他の書類を合わせた有価証券報告書を提出する必要があります。
有価証券の発行者である会社は、・・・内閣府令で定める事項を記載した報告書(以下「有価証券報告書」という。)を、内国会社にあっては当該事業年度経過後三月以内、外国会社にあっては公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして政令で定める期間内に、内閣総理大臣に提出しなければならない。
有価証券報告書は、事業年度終了後の翌日から3ヶ月以内に提出することが規定されています。
株主総会の期限と同様に、3月決算だと6月30日、9月決算だと12月31日が提出期限です。
会社の規模によって有価証券報告書のボリュームは異なりますが、大きな会社の場合は数百ページにもなります。期限に間に合わせるためにも、時間に余裕をもって作成しなければなりません。
決算書の提出は、企業の健全性と透明性を確保し、投資家やステークホルダーに対して信頼性を高めるために欠かせない手続です。
期限を過ぎてしまった場合、重大なペナルティや信頼性の損失が生じる可能性がありますので、企業は提出期限を見落とさないよう十分に注意を払う必要があります。税理士や会計士などの専門家の助言を仰ぎながら、時間に余裕を持って手続を進めることが重要といえます。