法人税を低く抑えたい!基本的な節税対策と注意事項をチェックしよう
会社などの法人が事業活動に伴い利益を計上した場合、所得の大きさに対応する法人税が課されます。売上を隠して過少申告するなどの脱税行為はいけませんが、適切な方法で税金の負担を軽くすることは可能です。
ここでは法人税に関する一般的な節税対策と注意点を取り上げましたので、「税負担を低く抑えたい」とお考えの方はぜひチェックしてください。
損金計上と特例の有効活用がポイント
法人税に関して節税効果を得るには、「損金(税法上の費用)を増やして課税所得を圧縮する」というやり方が基本形となります。
法人税負担の大きさは①課税所得と②法人税率から定まり、税率については基本的に一律であることから、課税所得の大小が税負担に直接的な影響を与えるといえます。
なお、課税所得は売上とイコールの関係にはありません。売上高から損金(≒経費)を差し引いて残った利益におおむね対応していますので、同じ売上高を維持したとしても、差し引く金額を大きくすることができれば課税所得および法人税額を抑えられます。
とはいえむやみやたらに支出をしたのでは、税負担を低くすることができても手元に残る利益(≒事業資金)も小さくなり、事業活動が続けられません。損金の支出はキャッシュフローを悪化させる要因にもなるため、税制上の特例措置なども有効活用しつつバランスよく節税対策に取り組むことが重要になってきます。
法人税節税の具体的な手法
節税方法は多岐にわたりますので、自社の状況や税制にも配慮しながら取り組み内容を考えていくことが大切です。ここでは例として以下の内容について紹介していきます。
- 役員報酬の調整
- 積極的な設備投資
- 福利厚生の充実
- 共済制度による積立
- 決算前の支払いの前倒し
役員報酬の調整
役員報酬は法人にとって損金算入可能な費用として扱われます。毎月同じ金額を支給するなど一定要件を満たせばその全額を損金として計上でき、役員報酬の増額が法人税の軽減につなげられるケースがあります。但し、事業年度の中途での増額は認められませんので、ご注意ください。
一方、役員個人の所得税や住民税、社会保険料は増加するため、トータルの税負担についても要考慮です。
※職務内容等に照らして不相当に高額な部分に関しては損金算入が認められないことにも注意。
また、役員退職金についても適正な金額であれば全額損金として計上でき、節税に効果を発揮します。受け取る役員にとっても退職所得控除が適用できるなど利点は大きいです。
※退職金の損金算入についても、同業他社との比較において妥当な水準であること、功労に応じた金額であることが求められる。
積極的な設備投資
設備投資は減価償却費として複数年にわたって損金計上でき、継続的な節税効果をもたらすでしょう。
また「中小企業経営強化税制」を利用することで、設備投資額について一定範囲で税額控除、または即時償却を選択することもできます。同制度は積極的な設備投資を進める企業にとって有益な節税手段となるでしょう。
※機械装置、測定工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウェアなど対象設備等は幅広く設定されている。なお、事前に経営力向上計画の認定を受ける必要がある。
福利厚生の充実
従業員向けの福利厚生を充実させることで節税効果を得ることも可能です。
たとえば社宅制度です。住宅手当は全額が給与として課税されるのに対し、社宅なら家賃の一部(賃貸料相当額の50%以上)を従業員が負担することで会社の損金として計上できます。
また、従業員全員を対象とした健康診断の費用は、一定の条件を満たせば全額損金として計上可能です。希望者全員を対象とする人間ドックについても損金計上できる可能性があります。
※支出が社会通念上妥当な金額であることが必要で、著しく高額な検査は福利厚生費として認められないことに注意。
このように、福利厚生を充実させれば、従業員満足度の向上と兼ねて節税対策を得ることもできるでしょう。
共済制度による積立
「中小企業倒産防止共済(経営セーフティー共済)」は、取引先の倒産による連鎖的な倒産を防ぐ目的で加入する仕組みです。それ自体万が一の事態への備えとして有益ですし、さらに掛金全額を損金算入できるという利点も持ちます。
また、経営者個人の節税に関しては「小規模企業共済」の活用も視野に入れると良いでしょう。小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の役員向けの退職金制度で、その掛金は全額が所得控除の対象となります。
※従業員数による加入要件の制限あり。
決算前の支払いの前倒し
もし、決算前に節税効果を調整したいのであれば、「少額の備品を前倒しで購入する」「短期前払費用の活用」「未払費用の計上」などの対策も検討してみましょう。
- 備品を前倒しで購入・・・30万円未満の備品については、中小企業者等の少額減価償却資産の特例により全額損金算入が可能。翌年度購入予定の備品を前倒しで購入することで節税効果を今年度に持ってくることができる。
- 短期前払費用の活用・・・翌事業年度以降の家賃や保険料を年払いで前払いし、短期前払費用として損金計上することも可能。
- 未払費用の計上・・・社会保険料や固定資産税などは、支払いが済んでいなくても債務が確定していれば未払費用として計上できる。
なお、これらの対策は翌年度の節税効果を下げることになりますので、今年度の課税所得を下げる必要性が高い場合にのみ着手すると良いです。
節税に取り組むときの注意点
節税効果を狙った上記のような取り組みを始める場合でも、以下の点には十分注意してください。
節税対策で留意すべきこと | |
|---|---|
脱税が疑われる行為は避ける | 脱税は、節税とは異なる。税法に基づいた合法といえる行為にしか着手してはいけない。 グレーかもしれない、適法かわからない、という場合は必ず税理士に相談して確認を行う。 |
事業実態との整合性 | 実態を伴わない、形だけの節税対策は税務調査により否認されるおそれがあるだけでなく脱税の容疑をかけられる危険性もある。 節税につながる制度を形式上設けただけで、実際にはその趣旨に沿った運用がなされていない、という状況は避けなくてはならない。 |
キャッシュフローへの影響 | 節税対策にばかり着目していると、多額の支出により資金繰りに悪影響を与える危険性がある。 中長期的な計画を立て、計画と照らし合わせながらバランスよく実施することが重要。 |
税制改正への対応 | 毎年のように税制は改正がなされており、ルールは常に変動している。 特に特例措置、控除制度などを活用するときは、すでに運用がなくなっていたり適用期限を過ぎていたりすることもあるため、最新情報をチェックしてから取り組むようにする。 |
適切な方法で取り組めば税負担を最適化できますが、行き過ぎた行為は税務調査で指摘されるリスクがある上、脱税行為にまで手を出してしまうと刑罰を科されることもあります。
そのため法人税の節税効果を狙うのであれば、正しい知識を身につけ、計画的に取り組むことを心がけましょう。税理士と連携することで、リスクを最小限に抑えながら節税効果を高めることもできます。










