税務調査とは?調査の種類や実施時期、調査の流れについて解説
所得税や法人税について、納税者が申告した内容が正しいかどうかを確認するために調査が行われることがあります。この記事では、この「税務調査」について、その種類や調査が行われる時期、調査の全体的な流れについて解説していきます。
税務調査とは
日本では、所得税や法人税の申告および納税について、「申告納税制度」が採用されています。これは、“個人・法人を問わず納税者が自ら税額を計算して申告を行い、それに基づいて納税をする”という制度です。相続税や贈与税についても同様です。
この制度によって納税者が申告・納税した内容や金額、計算方法が正しいかどうかを確認するために行われるのが「税務調査」です。
株式会社などの法人はもちろん、個人事業主やフリーランスなども対象です。
納税者の中には、故意でなくとも計算ミスをしてしまっていたり、故意に不正行為を行っていたりする可能性があります。そのため、納税者の申告内容にミスはないか、虚偽の申告をしていないかなど税務調査により確認し、誤り等がある場合にはそれらを正すため修正申告、更正・決定などの手続きを執ります。
なお、税務調査には①任意調査と②強制調査の2種類があります。
次項でこの2つの調査について見ていきましょう。
任意調査と強制調査について
まずは「任意調査」についてです。
任意調査では、事前に税務調査が入る旨の連絡を受け、調査官と呼ばれる税務署の職員により調査が実施されます。税務調査のほとんどはこの任意調査です。
ただ、“任意”調査という名称ではあるものの、調査を拒んだり求められた資料を提出しなかったりすると罰せられることがあるので注意が必要です。
次に「強制調査」についてです。
強制調査は任意調査と異なり事前の連絡なしで突然訪問されて行われる調査です。マルサと呼ばれる国税局査察部の調査員が裁判所の令状を得た上で強制的に調査を行います。
この調査は、巨額の脱税の疑いのある納税者に対して行われます。
さらに詳しく言うと、脱税額が1億円を超える、脱税の隠蔽工作が疑われる場合に、限定的に実施される調査です。脱税にかかわる資料・証拠の改ざんや隠蔽をできないようにするため、突然の訪問によって強制的に行われるのです。
任意調査と強制調査の2種類がありますが、ここからは多くの方に関係する任意調査に焦点を当てて、調査が行われる時期や全体的な流れについて見ていきます。
税務調査の時期
税務調査が行われる時期について明確な決まりはありません。しかし、税務署の繁忙期には調査件数が減少する傾向があります(部署によります)。
確定申告の時期の2~3月頃(所得税)と、人事異動の多い7月頃が税務署の繁忙期に当たるため調査件数は少なく、反対に、確定申告時期と人事異動の時期の間の4~6月、また人事異動の落ち着いた8~12月頃にかけて調査件数は増加する傾向があります。
調査を受ける頻度については、法人の場合だと5年に1度程度の間隔で実施されることが多いと言われています。ただし、法人によっては3年に1度や、10年に1度の頻度で調査を受けることもあるため、一概には言えません。
税務調査の流れ
続いて、任意調査が行われる際の流れについてですが、一般的な流れとしては以下の通りです。
- 1.事前通知
- 2.必要書類の準備
- 3.調査実施
- 4.調査結果
事前通知
まず、「税務調査を行う」との連絡が税務署から会社または個人に対し電話で入ります。
顧問税理士が申告時に「税務代理権限証書」を申告書と共に提出している場合には、税理士へも事前通知がされます。
連絡を受けたら、実施日の日程調整と、調査場所、調査の対象なる税目、期間などの確認も行います。調査実施日は、会社の業務の都合なども考慮して日程を決めることができます。
顧問税理士がいる場合で調査に立ち会ってもらう場合には、税理士が対応可能な日時を調整した上で決定します。
必要書類の準備
調査実施日までに、税務署からの指示に従って書類を用意しておきます。
法人の場合、一般的に必要になる資料は次の通りです。
- 決算書(貸借対照表・損益計算書など)
- 帳簿(総勘定元帳・仕訳帳・売掛帳・買掛帳・現金出納帳・預金出納帳・経費帳など)
- 証憑書類(領収書・請求書・預金通帳)
- 人件費資料(源泉徴収簿・扶養控除等申告書・社会保険関係書類・従業員名簿など)
- その他資料(登記簿・定款・株主総会議事録など)
必要書類は調査項目や調査期間によっても異なるため、税務署からの指示をしっかりと確認しましょう。過去の資料について、社内ではなく外部の倉庫に保管している場合は、取り寄せるのに時間がかかることもあるため早めに準備しておくことが望ましいと言えます。
時間に余裕のある場合は必要書類に漏れがないかを税理士にも確認してもらうとより安心です。
調査の実施
調査当日は、1名もしくは2名以上の調査員によって調査が行われます。調査にかかる期間は、法人の規模や調査項目によっても異なりますが、多くの場合1~3日程度を要します。
調査の対応には、経理部の社員および人事部の社員若しくはそれらに相応する立場の社員、顧問税理士が立ち会うことが一般的です。個人の場合は、事業主と経理担当者がいるときは、 経理担当者が対応します。
まず、挨拶と会社側および調査官側の両者の紹介から始まり、事業内容の説明を求められることもあります。求められたら簡潔に説明し、その後本格的な調査に入っていきます。
調査では、調査官が帳簿書類などに目を通し、質問事項があればその都度または最後にまとめて質問を行い、それに対して回答します。
顧問税理士が立ち会う場合であれば、基本的には税理士が回答してくれます。
最中に追加で資料の提出を求められることもあります。その場で提示できる場合は提示し、難しい場合は後日提示します。
調査結果を受ける
調査が終了してから結果がわかるまでは約1ヶ月程度かかります。
調査結果が申告内容に何も問題がないと認められた場合、これを「申告是認」と言います。この場合は、特別な手続等は必要なく今後も引き続きそれまでの方法で会計処理を行えば良いということです。
反対に、申告内容に誤り等がある場合は税務署から指摘を受け、税理士と相談した上で「修正申告」を行うという流れになります。
税務調査について、時期や流れについて解説しましたが、普段から適切な会計処理と資料の管理を正しく行っていれば、それほど怖いものではありません。
顧問税理士がいる場合であれば協力して調査対応の準備・対策を行いますし、いない場合でも税務調査対応を依頼できる税理士もいますので、依頼を検討してみるのも良いでしょう。