二次相続とは?一次相続との違いや節税対策について
相続対策を図るときは「二次相続」にも目を向けることが大切です。最初に発生した相続にのみ着目して節税対策を取っても、その後すぐに発生した二次相続で大きな相続税が発生することもあるためです。
そこで当記事ではまず「二次相続とは何か」ということを説明し、続いて「二次相続を意識した節税対策のポイント」も紹介させていただきます。
二次相続とは
「二次相続」とは、被相続人の配偶者がその後亡くなって発生する相続のことです。区別のため、先に発生していた相続は「一次相続」と呼ばれます。
具体例を考えてみるとわかりやすいです。次のように、同じ家族内で連続して発生するケースを二次相続と呼んでいます。
当事者 | 一次相続 | 二次相続 |
---|---|---|
A(夫) | 被相続人 | ― |
B(妻) | 相続人 | 被相続人 |
C(子ども) | 相続人 | 相続人 |
D(子ども) | 相続人 | 相続人 |
一次相続:最初に夫Aが亡くなった場合、配偶者である妻Bと子どものC、Dが相続人となる。そしてこのときAの財産をBとC、Dが相続し、その価額に応じて相続税が課税される。
二次相続:その後Aの配偶者である妻Bが亡くなると、相続人は子どものCとDだけになる。このときもBの財産をCとDは相続し、その価額に応じて相続税が課税される。
相続税に関する二次相続の特徴
二次相続に関して注意すべきは「相続税の負担が大きくなりやすい」という点です。二次相続には次の特徴があるためです。
- 配偶者の税額軽減が使えない
- 基礎控除額が小さくなる
- 生命保険金等の非課税限度額が小さくなる
また、「同じ財産に二度の税負担が発生してしまう」と考えることもできます。仮に二次相続の被相続人である配偶者が固有の財産を持っていなかったとしましょう。上の例でいうと、Aの財産をBが取得して相続税が課税、二次相続でBの財産(元Aの財産)をCとDが取得してさらに相続税が課税されます。
一次相続と二次相続の間隔が短く連続する形で相続が発生すると、「2回も課税された」という感覚をより強く感じることでしょう。
二次相続における節税対策
重要なのは将来起こる相続のことも意識して対策を図るということです。目の前の相続のみに注目していたのでは、二次相続も合算したときの税額が大きくなることもあります。そこで遺産分割方法を工夫するなどの対策を検討しましょう。
配偶者控除に頼りすぎない遺産分割をする
配偶者の税額軽減は節税効果がとても大きいです。そのため一次相続の時点でできるだけ多くの財産を配偶者に取得してもらえば節税効果を高めることができます。
しかしその分二次相続で子どもが大きな財産を取得することになり、大きな税負担を負う可能性があります。結局、一次相続と二次相続における相続税額を合計すると、配偶者の税額軽減に頼りすぎない方が節税効果は大きくなることもあるのです。
そこで遺産分割の方法に工夫が必要です。一次相続の時点で二次相続における相続税額もシミュレーションして、子どもにもある程度財産を取得してもらいましょう。
値上がり・収益性のある財産を子どもが取得しておく
遺産分割をするときの工夫の一つですが、「将来値上がりする可能性が高い財産や、収益性のある財産を先に子どもに取得してもらう」といった対策方法も挙げられます。
例えば、土地や株式には要注意です。地価が上がるかもしれない、会社の評価が上がるかもしれない、という場合は土地や株式の相続税評価額が二次相続でさらに高くつくかもしれず、二次相続での負担がさらに増してしまいます。
一方でこれらの財産を先に子どもが取得しておけば、その後高値になったとしても相続税を気にする必要がありません。
収益性のある財産、例えば賃料収入が発生している不動産も同様です。配偶者が取得して二次相続が発生するまでに金銭が増えてしまい、より相続税の負担が増してしまいます。そのため資産価値の高いものは子どもが取得しておくと良いでしょう。
相次相続控除の活用
短い間隔で二次相続が発生したときは「相次相続控除」の存在を忘れずに適用を受けましょう。
これは相続が連続して発生したとき、二度相続税が課税されることに配慮して設けられた控除制度です。一次相続との間隔が短いほど大きな控除額を適用することが可能で、その間隔が10年以内であれば適用を受けることができます。
ただし適用を受けるためには相続税の申告をしないといけません。税額が0円になる場合でも課税財産や税額について記入した申告書を提出する必要がありますし、相次相続控除の適用を受ける旨を記入する申告書(第7表)も提出する必要があります。
小規模宅地等の特例を活用
土地は単価が大きな財産ですし、建物のように経年劣化で大幅に値下がりしていくものでもありません。相続税の負担を左右するもっとも大きな要因ともいえますので、土地の取り扱いには特に留意すべきです。
ここで注目したいのが「小規模宅地等の特例」です。被相続人と同居しており相続財産である宅地が生活に必需であるなどの状況にあれば、この特例により軽減される税負担で土地が相続できる可能性があります。
二次相続で適用を受けられるなら問題ありませんが、一次相続のタイミングでなければ適用を受けられない事情があるのなら、先に土地を子どもが取得しておいた方が良いです。
この特例の使い方にも注意しながら遺産分割協議を進めていきましょう。
生前贈与や生命保険への加入
生前贈与をしておくと相続財産を減らすことができますので、贈与時に使える控除や特例を駆使して先に財産を渡しておけば節税効果が得られます。
生命保険に加入することでも節税効果が得られます。保険料として金銭を減らすとともに、相続開始後に受取人へ保険金を渡すことができます。みなし相続財産として課税対象にはなりますが非課税枠が設けられていますので、法定相続人の数に対応して500万円や1,000万円、あるいはそれ以上の保険金を非課税で受け取ることが可能です。
これらの対策は二次相続に限ったものではなく一般的な相続税対策として有効です。もし、「すでに一次相続を終えていて、二次相続を意識した対策が取れていなかった」という場合でも、節税効果を得ることができます。
一次相続でほとんどの財産を配偶者が取得してしまい、このままだと二次相続で子どもたちに大きな税負担がかかってしまうと悩むこともあるかもしれません。このときでも生前贈与や生命保険への加入など、今から取れる対策があるのです。
ただし、税制を理解して適切な方法で手続を進めていく必要があります。計算ミスも発生するかもしれませんので、税理士にも相談しながら、慎重に節税対策を進めるようにしましょう。