暦年贈与と相続時精算課税による贈与の比較|どちらの方が節税になる?
生前贈与による相続対策に取り組む際、節税の観点から「暦年課税と相続時精算課税のどちらで贈与を行うべきか?」を考えることもあります。贈与者・受贈者の血縁関係や年齢によっては相続時精算課税制度を利用することができ、税負担を小さく抑えつつ贈与を行うことができるのです。
しかしながら、この制度の利用が常に大きな節税効果をもたらすわけではありません。暦年贈与と比較しながら、どのような差が生じるのか、確認していきましょう。
2つの課税方式の要点
暦年課税は、1年間に受け取った贈与財産に対して課税が行われる、贈与の原則的な課税方式です。
受贈者1人当たり年間110万円までは基礎控除により贈与税がかからず、110万円を超えた部分から、累進税率にて課税が行われます。毎年少額ずつ財産を移転すれば節税効果を得られますが、「相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算される」というルール(持ち戻し)には注意が必要です。
※4〜7年目に行われた贈与に関しては、総額100万円までは加算されない措置がある。
一方、相続時精算課税とは、2,500万円の枠内であれば贈与税を課さず、贈与者が亡くなった際に当該贈与財産と相続財産を合算し、相続税で精算するという課税方式です。
こちらの方式においても110万円の基礎控除は適用可能で、その範囲内であれば贈与税はかかりません。相続財産への加算も不要です。ただし、一度この制度を選ぶと、同じ贈与者からの贈与に関して暦年課税に戻ることはできません。
暦年課税 | 相続時精算課税 | |
|---|---|---|
基礎控除 | 110万円/年 | 110万円/年 |
相続財産への加算 | 相続前7年以内 | 110万円超の贈与額 |
贈与税の負担 | 累進税率で課税 | 2,500万円まで贈与税ゼロ ※超過分には一律20%適用 |
制度の変更 | ― | 選択後は暦年に戻れない |
贈与を継続する期間によって節税効果に差が出る
どちらの課税方式で生前贈与に取り組むべきか、節税を重視するなら贈与の期間にも注目する必要があります。
贈与期間が7年以内のケース
相続が比較的近い将来に想定されるケースで暦年贈与を行う場合、持ち戻しルールの影響が大きいです。基礎控除をフル活用して贈与を続けていても、7年以内に相続が始まると、その期間中の贈与は原則として相続財産に持ち戻されてしまいます。
一方、相続時精算課税では、年間110万円まで相続財産への加算対象外です。期間が短くても、毎年110万円分は課税を回避しながら着実に財産を移転できます。
贈与期間が7年超のケース
もし12年にわたり暦年贈与を行ったとすれば、持ち戻しの対象になるのは相続直前の7年間だけです。それより前の5年分の贈与は持ち戻しがなく、非課税枠を活かせる割合が大きくなってきます。
また、相続時精算課税でも基礎控除による節税効果は積み上がります。そこで、贈与額が基礎控除額から大きく外れない規模で10年前後贈与を行うとすれば、両制度での節税効果の差は縮まってくるでしょう。
贈与財産の種類や金額によっても節税効果に差が出る
課税方式の違いだけが節税効果の差を生むわけではありません。実際の負担の大きさは、財産の性質によっても変わってきます。
一度に大きな財産を移転したいケース
暦年贈与として110万円を大きく超える財産を与えると、高い税率がかかります。
たとえば2,110万円を一度に贈与すると、基礎控除後の2,000万円が課税対象となり、一定要件を満たす親子等の間に適用される特例税率でも45%が適用されます。結果的に、635万円もの贈与税を納めないといけなくなります。
もし相続時精算課税制度を利用していれば、基礎控除と特別控除が適用できますので、贈与時点での課税はありません。受贈者の資金を温存しながら大きな財産を渡すことができます。
なお、課税を回避できた2,000万円にも後に相続税が課税されます。ただ、相続税は適用される税率が贈与税に比べてかなり小さくなる傾向にあるため、トータルの納税額も抑えられる可能性が高いです。
値上がりが期待できるケース
相続時精算課税では、贈与時の価額で相続財産に加算します。贈与時に1,000万円だった財産が相続時に2,000万円に値上がりしていても、加算されるのは1,000万円です。
そのため、将来的な値上がりが見込まれる株式や不動産の贈与には、相続時精算課税が節税につながる場面もありますが、逆に値下がりの可能性もあるため注意が必要です。
土地を贈与するケース
土地を贈与すると、相続発生時に「小規模宅地等の特例」が適用できなくなります。自宅や事業用宅地の評価額を最大80%減額できるこの特例を使えなくなることは、場合によっては贈与による節税効果を上回るデメリットになり得ます。
そのため価額の大きな土地の贈与を検討するときは、相続時精算課税による節税効果だけでなく、相続税における特例の適用関係も含めた試算が欠かせません。
選択のポイントと留意点
両制度の優劣は、贈与の期間・金額・財産の種類・税率など多数の要素が組み合わさって決まります。
また、課税方式を何度も変更することはできません。そのため将来の動向も慎重に予測するなど、よく考えて決断すべきです。税理士への相談を通じて、個別の事情に即した選択をしましょう。










