決算の流れとは?6つの手順に分けてわかりやすく解説!
企業が年度末に差し掛かると、株主や関係者に対してその年度の財務状況を報告する決算手続きが必要になります。決算手続きは、正確かつ適切な情報を提供し、企業の財務状況を明確にするために非常に重要です。
当記事では、一般的な決算手続きの手順について、6つのステップに分けて説明していきます。
STEP1:記帳の確定
まず、決算処理を行うにあたって、その年度に行われた全ての取引について記帳を完了していなければなりません。
決算が近づき慌てて処理するのでは膨大な作業量になると予想されるため、全ての記帳が間に合わない可能性や、ミスが起こる可能性が高くなってしまいます。
そのため、記帳は溜め込まず、取引があったときに記帳しておくことが大切です。
全ての記帳を終えたら、記帳内容が正しいかどうか、漏れがないかどうかを確認します。
未処理の請求書や領収書はないか、試算表を作成して借方・貸方が一致しているかなど、しっかりと確認します。
STEP2:決算整理仕訳
全ての記帳が完了すれば、決算整理仕訳を行います。
複式簿記のルールに従い記帳を行うと、期中と決算日時点での情報にズレが生じてしまうことがあります。このズレを修正するのが決算整理仕訳です。
例えば、経過勘定の計上があります。
これは、事業年度中に発生した取引について、収益および費用を正しく対応させるために行われます。
具体的には、年度中にサービスを提供されたが支払が済んでない取引について、「未払費用」の仕訳をします。
このように、「未払費用」、「前払費用」、「未収収益」、「前受収益」の4つの経過勘定を使って、仕訳を行います。
また、固定資産について減価償却費を計上するのも決算整理仕訳です。
減価償却とは、固定資産の取得価格を耐用年数に応じた期間で費用計上していく処理をいいます。資産計上している固定資産のその年度分を費用化します。
これらの仕訳を行うことで、決算日時点の情報が正しいものとなり、正しい情報を翌年度に繰り越すことができます。
STEP3:決算書の作成
決算整理仕訳も完了すれば、決算書の作成に進みます。
作成する必要のある書類は、会社法第435条によって定められています。
株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
作成すべき具体的な書類について紹介します。
貸借対照表
「貸借対照表」は、「Balance Sheet(B/S)」と呼ばれます。
これは決算日時点の財政状態を表しており、資産・負債・純資産の3つに分類して記載されます。ここから、会社が保有している資産、返済しなければならない負債、返済不要の純資産がどれくらいあるのかを読み取ることができます。
損益計算書
「損益計算書」は、「Profit and Loss Statement(P/L)」と呼ばれます。
1年間に発生した収益・費用から利益を計算し、会社の業績を表す計算書のことです。
どれくらいの売上があるのか、何に費用がかかったのか、どれくらい儲かったのかを読み取ることができます。
なお、損益計算書に記載される利益は一つではありません。
「売上総利益(粗利)」、「営業利益」、「経常利益」、「税引前当期純利益」、「当期純利益」という5つの利益が示されます。
これにより、本業から利益が出ているのか、それとも本業以外から利益がでているのかなども確認することができます。
株主資本等変動計算書
「株主資本等変動計算書」は、会社法の改正によって新たに加わった計算書類で、「Statements of Shareholders' Equity(S/S)」と呼ばれます。
株主資本など、貸借対照表の純資産の部の項目について、変動事由を報告するために作成されます。
個別注記表
「個別注記表」は、貸借対照表や損益計算書の注記事項を一覧にして表したものです。
株主資本等変動計算書と同様、新たに加わった計算書類です。
貸借対照表や損益計算書に記載される数値からは読み取ることができない内容について、補足するために作成されます。
株主や関係者が会社の財政状態・経営成績を適切に読み取れるよう、作成する必要があります。
事業報告書
「事業報告書」は、事業年度ごとの会社の状況や事業内容について記載します。
記載内容としては、「株式会社の状況に関する重要な事項」や「業務の適正を確保するための体制等の整備に関する事項」、「特定完全子会社に関する事項」などがあります。
附属明細書
「附属明細書」は、前述した貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、事業報告書などについて、補足すべき重要な項目を記載します。
例えば、固定資産について、期首残高、期末残高、増減額などを示した固定資産等明細表や、株式や債券などの有価証券について、数量や銘柄を示した有価証券明細表などがあります。
STEP4:取締役会・株主総会での承認
作成した決算書は、取締役会・株主総会で承認を得る必要があります。
なお、株主総会には毎年度定期的に開催される「定時株主総会」と、必要に応じて開催される「臨時株主総会」の2つがありますが、決算書の承認は「定時株主総会」で承認を得ることになります。
STEP5:申告書の作成
作成した決算書をもとに、申告書の作成と納税額の計算を行います。
法人が納税する必要がある税金の内容は以下の通りです。
法人税
「法人税」は、法人の企業活動によって得られた所得金額に対して課税される税金です。
この所得金額とは、法人税法上の益金の額から損金の額を差し引いた金額を指します。
そのため、企業会計上の収益から費用を差し引いた利益とは必ずしも一致するわけではありません。
会計は適切な損益計算を行うことを目的としているのに対して、税法では公平な課税行うことを目的としていることが不一致の原因です。そのため、企業会計上の利益に、益金の算入、損金の不算入、益金の不算入、損金の算入など、税務調整を行い、課税所得を計算します。
消費税
「消費税」については、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合に課税事業者となり、申告が必要になります。反対に、1,000万円以下の場合は免税事業者となり、申告・納税の必要はありません。
ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合でも、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合には課税事業者となります。
法人事業税
「法人事業税」は、自治体に事業所を設置して事業を営む法人の所得に課税される税金です。
事業を行うにあたって利用している公共施設やサービスについて、一部を負担するものであり、地方税に該当します。
なお、法人税、消費税、法人住民税などと違い、法人事業税は、翌年の損金に算入できるのが大きな特徴です。
法人住民税
「法人住民」税は、事業所が所在する都道府県および市町村が課税する税金で、「法人都道府県民税」と「法人市町村民税」の2つがあります。
法人事業税と同様、地方税に該当します。
なお、申告書の作成には専門知識が必要であることや、複雑な作業が多いこと、税制改正があることなどから、一般的には専門家である税理士に依頼することが多いです。
STEP6:申告書の提出・納税
作成した申告書および決算書を提出し、算出された税金を納めます。
ここでの注意点は、“税金の種類によって申告先が異なる”ということです。
法人税と消費税は税務署、法人事業税及び法人都道府県民税は都道府県税事務所、法人市民税は市町村役場が申告先です。
なお、決算日の翌日から2ヶ月以内が申告期限になります。3月末を決算日とする会社であれば、5月末が申告期限です。決算日から申告期限まで、決して時間に余裕があるわけではありません。計画的に進めることが重要です。
申告および納税が完了したら、申告書類・決算書類は保管しておきます。請求書、領収証等は保存期間が定められているため、きちんと整理して保管しておきましょう。
以上で解説したのは、株式会社の一般的な決算の流れです。業種や企業によって異なるケースもあるため、事前に確認が必要です。
十分な時間を確保して決算整理仕訳や決算書の作成を丁寧に行うことで、正確な情報を提供し、円滑な決算を行うことができます。また、余裕を持った計画によって、トラブルやミスを未然に防ぐことができ、スムーズに決算を終えることができるでしょう。