青色申告の申請について|手続きの流れや必要書類、個人事業主と法人の相違点など
本格的に事業を営む事業者であれば、個人でも法人でも「青色申告」を選択することを検討してみましょう。そのために必要な手続きや必要書類、青色申告の特徴についてここで解説しています。
青色申告を検討している方や既に利用している方はぜひ目を通してください。
青色申告について
一定の帳簿書類を備え付け、正規の簿記または簡易簿記に基づいて帳簿を記載し、その記帳に基づいて所得税または法人税を計算して申告する方法が「青色申告」です。
青色申告によって税務申告をすることには、次の特徴があります。
- 青色申告を選択した場合、決められた帳簿を用意して日々の取引を記録しなければならない。
- 事業所得や不動産所得、そして山林所得のいずれかが発生している個人事業主及び全ての法人が対象になる。
- 青色申告を行うためには、前もって税務署長の承認を受けなければならない。
- 記帳は「複式簿記」または「簡易簿記(単式簿記)」のいずれかで行う。
- 複式簿記:原因と結果の2つの側面から取引を記録する方法。資産、負債、収益、費用などの変動を詳細に把握する。
- 簡易簿記(単式簿記):主に現金の収支を記録する簡易的な方法。お小遣い帳や家計簿に似た形式で記録が行われる。現金出納帳や売掛帳、買掛帳、経費帳などの帳簿を使用する。
青色申告制度は、適切な記帳習慣の促進、正確な所得計算に寄与しています。申告義務者には事務的な負担がかかるものの、その分青色申告を選択しなかった場合の「白色申告」より税制上の優遇措置が受けられます。
個人事業主と法人のする青色申告の違い
青色申告は個人事業主と法人の両方で利用できる制度で基本的な特徴などは共通しています。ただ、それぞれには次のような違いもあります。
違い | 個人事業主 | 法人 |
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申告対象の税 | 所得税 | 法人税 |
申請期限 | ・青色申告で申告しようとしている年の3月15日が原則 ・ただし、開業年であって開業が1月16日以降のときは、事業開始日から2ヶ月以内が期限となる。 | ・青色申告で申告しようとしている事業年度開始の日の前日までが原則 ・ただし、会社設立1期目では「設立の日から3ヶ月を経過した日」と「第1期事業年度終了の日」のいずれか早い日の前日までが期限となる |
赤字の繰越期間 | 最大3年間 | 最大10年間 |
青色申告特別控除 | 最大65万円の青色申告特別控除を受けられる | 青色申告特別控除の制度はない |
個人事業主が青色申告の申請をする方法
個人事業主は、「所得税の青色申告承認申請書」を作成・提出することで申請します。申請書を作成し、所轄の税務署に提出するだけです。
なお、申請書の提出方法は以下の3つから選択できます。
税務署窓口での直接提出 | ・直接対面で提出できるため不明点をその場で確認できる。 ・税務署の営業時間内に行かないといけない。 |
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郵送による提出 | ・税務署に行く必要がなく時間や場所の制約が少ない分早めに郵送(郵便消印に注意)。 ・書類の不備があった場合、再提出までに時間がかかる。 |
e-Taxを利用した電子申請 | ・環境が整っていれば郵送よりもさらに便利で効率的だが、事前にe-Tax利用のための準備(利用者識別番号の取得など)が必要。 ・個人事業主の場合、青色申告特別控除を最大額に引き上げるための要件の1つ。 |
青色申告を行いたい年の3月15日まで(1月16日以降の開業なら開始日~2ヶ月間)に提出しましょう。期限に間に合わなければその年は白色申告になってしまい、青色申告特別控除の適用は受けられません。
※提出期限が土日祝日となる場合は翌営業日が期限。
なお、いったん青色申告承認申請書を提出すれば、その後毎年提出する必要はありません。
「所得税の青色申告承認申請書」の作成方法
申請書の正式名称は「所得税の青色申告承認申請書」です。
ここには以下の情報を記入する必要があります。
- 所轄の税務署名
- 提出日
- 事業主の基本情報(氏名、生年月日、職業、屋号、電話番号など)
- 青色申告を開始したい年度
- 事業の所在地
- 所得の種類
- 簿記の形式
- 使用する帳簿の種類
「所得の種類」欄では、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかにチェックを入れます。商品販売やサービス提供、製造業など、ほとんどの事例では事業所得にチェックを入れます。
これ以外で、たとえばアパートやマンション、駐車場などの賃貸収入があるときは不動産所得にチェックを入れます。
もし、山林の立木を伐採して販売したり山林そのものを売却したりするのであれば山林所得をチェックします。
「簿記の形式」欄は、複式簿記・簡易簿記・その他のいずれかにチェックを入れます。
65万円の青色申告特別控除を受けたい場合やより詳細な経営状況を把握するための記帳をしたいのであれば、複式簿記を選択しましょう。
国税庁のWebサイトでフォーマットも確認しておくと良いです。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/10.pdf
法人が青色申告の申請をする方法
法人の場合も個人事業主の場合と手続きに大差はありません。青色申告の承認申請書を作成して本店または主たる事務所の所在地を管轄する税務署に提出するだけです。
提出方法も変わりなく、窓口や郵送のほか、e-Taxを使った電子申請が認められています。
「青色申告の承認申請書」の作成方法
法人税の場合、申請書は「青色申告の承認申請書」という名称です。フォーマットは個人事業主が使うものとは異なるため要注意です。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/056-1.pdf
こちらもまず所轄税務署名・提出年月日・法人名・所在地・代表者氏名などの基本情報を記入し、参考事項欄に各社の実態に合った情報を入れていきましょう。具体的には「帳簿組織の状況」、「特別な記帳方法の採用の有無」、「税理士が関与している場合におけるその関与度合」について記入する箇所があります。
- 帳簿組織の状況
- 仕訳伝票、総勘定元帳、現金出納帳などの帳簿や伝票の種類を記入し、「3枚複写伝票」や「ルーズリーフ」、「装丁帳簿」などとその形式を記載。
- 帳簿や伝票の種類別に、「毎日」や「1週間ごと」などと記入頻度を記載。
- 特別な記帳方法の採用の有無
- 伝票会計採用または電子計算機利用に該当するときは該当項目を丸で囲む。
- 税理士が関与している場合におけるその関与度合
- 税理士に依頼しているときは「伝票整理から決算書作成までの一切の経理業務」などと具体的に依頼範囲を記載する。
青色申告選択後の実務への影響
青色申告で税務申告を行うには、複式簿記による正確な経営状況の把握が欠かせません。これは個人事業主だと税務上の優遇措置が受けられるという直接的なメリットにつながります。法人でも、自社の経営状況が数字で示せることが対外的な信用獲得につながることから大きな意味を持ちます。
複式簿記による記帳や帳簿書類の保存など事務負担は増加してしまいますが、事業者として本格的に活動を続けるのであれば青色申告の選択も前向きに検討しましょう。実際に多くの事業者は白色申告ではなく青色申告の申請を行っています。