相続人の調査はなぜ必要? 相続人を確定する意味と調査の方法について
相続開始後は遺言書の有無を確認したり相続財産を調べたりしなければなりません。そしてこれらの手続に併せて“相続人の調査”も必要です。相続に関する手続の中でも必須のものと言えます。
ここではなぜ相続人の調査が必要なのか、どうやって調査をするのか、といったことを解説していきます。
相続人を調べる意味とは
相続が開始されると、亡くなった方の財産・権利義務などが相続人へと承継されます。そのため相続人は被相続人の土地や建物、現金、預貯金、有価証券などを取得することができるのですが、相続人が複数いると遺産を分割しなければなりません。
実は3人の相続人がいるのに2人しかいないものと考えてしまい、認識できている2人で半分ずつ遺産を分割したとしましょう。後から追加で相続人が出てくると、前にした遺産分割は無効になってしまいます。再度協議を行い、遺産の分割方法を検討しなければならなくなります。
そこで、遺産分割前に相続人をしっかりと調査する必要があるのです。
被相続人の配偶者や子は誰なのか、といったことは判明しているケースがほとんどですので大きな問題にならないこともありますが、隠し子やその他意外なところから相続人が出てくる可能性もあります。
前の配偶者との間で生まれた子や養子縁組をした子などが存在していないかどうか、後々揉めることのないよう、よく調べることが大切です。
相続人の調査の方法
相続人の調査にあたっては戸籍謄本等の取得が欠かせません。そこで、まずは被相続人の本籍地の市町村役場で本人の戸籍謄本を集めていくことになります。
被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める
市町村役場で被相続人の戸籍を1つ入手して終わりとはなりません。
集めるべき資料は、被相続人が生まれてから死亡するまでの全期間分の戸籍です。網羅的に戸籍の情報を確認しなければ確実な相続人調査ができないからです。
相続人となるはずの人物が亡くなっている場合
被相続人の配偶者と子が相続人になるのが一般的なケースです。しかし被相続人が亡くなるより早く、相続人となるはずであった立場の子が亡くなっていることもあります。この場合には亡くなった子のさらに子、つまり被相続人の孫が相続権を得ることになります。
しかしその孫が相続人であることを確定させるには、亡くなった子の戸籍を集めていかなければなりません。子に関しても同様に、出生から死亡までの戸籍を集めていかなくてはなりません。
なお、子がいない場合には被相続人の親が相続人になることがあります。このとき、各相続人の現在の戸籍につき確認を行いましょう。親などの直系尊属がいない場合には被相続人の兄弟姉妹が相続権を得ることになりますが、ここでも同様に兄弟姉妹の現在の戸籍を確認しましょう。
漏れなく戸籍を集める方法
相続人調査では、出生から死亡までの戸籍を集めるのが基本です。漏れなく戸籍を集めていかなければならないのですが、以下の手順に沿って集めていけば途切れることなくすべての戸籍を集めることができるでしょう。
1. 亡くなったときの戸籍謄本もしくは除籍謄本を入手する
2. 上の戸籍に記載された“1つ前の本籍地”の戸籍謄本を入手する
3. 上の作業を繰り返して、被相続人が出生に至るまでの戸籍を入手する
※本籍地の移転がある場合は旧本籍地(移転前の本籍地)の市町村役場で請求するなど注意が必要です。
相続人調査はプロに任せると安心
ご自身で相続人調査を行うことも可能です。複雑な親族関係になっていなければすぐに調査は終わると思われます。しかし事案が単純かどうかは着手の段階ではわかりませんし、万が一漏れがあると大きなトラブルに発展するおそれがあります。
また相続関連の手続は多数ある上に、期間の制限が設けられている例が多いです。そのため相続人の調査は専門家に依頼することが推奨されます。弁護士や行政書士、司法書士などの専門家がおり、それぞれに得意分野が異なります。
そこで相続税に関して不安があるのであれば税に詳しい税理士への依頼がおすすめです。相続人の調査に加え、相続税の計算、節税を狙った効果的な遺産分割方法などのアドバイスも得られます。