相続財産のうち大きな金額を占める主要財産を紹介
相続の対象になる財産は非常に幅広いです。しかし金額ベースで見れば、一部の大きな財産がほとんどの相続財産を占めているケースが多いということがわかります。
そこでここでは、金額に着目したときの主な相続財産を紹介していきます。
相続財産全体の傾向
国税庁から毎年相続税の申告実績が公表されています。
令和3年12月に公表された令和2年分の実績(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2021/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf)を参考に、相続財産全体の傾向からを紹介していきます。
まず、令和2年における死亡者数(被相続人数)ですが、約137万3,000人で、この値は前年対⽐99.4%です。
ただしこの全員に関して相続税の申告手続きが必要になるわけではありません。
実際、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は約12万人です(前年対比104.4%)。
そして課税価格の総額は16兆3,937 億円、申告税額の総額は2兆915 億円という金額が記録されています。
前年のみと比較した場合、死亡者数は減った一方で、相続税の申告をした人が多く、課税割合は0.5%増えたということがわかっています。課税価格も多く、被相続人1人あたりの相続で生じる税額は1,737万円と、令和元年より23万円増したという計算になっています。
課税割合や課税対象被相続人数が緩やかに増加したのは、これまでの傾向と変わっていませんが、これまで年々1万人単位で増加傾向にあった「被相続人数全体」が令和2年で減少したのは少し特徴的といえるでしょう。
金額ベースで見た相続財産の構成比
被相続人の数や申告税額など相続に係る全体数を前項で紹介しましたが、次に、相続の対象になる財産の内訳を見ていきましょう。
土地は相続財産の34.7%を占める
金額ベースで見ると、相続財産のうち最も大きな割合を占めるのは「土地」です。
全体の34.7%も占めています。
土地は、10年前から最も大きな割合を占める相続財産でしたが、平成23年ではその割合がさらに大きく、45.9%を占めていました。そこから年々減少傾向にあり、令和元年では34.4%にまで徐々に下がってきていましたが、令和2年ではわずかに増加に転じ、0.3%割合を伸ばしました。
土地はさらに、「宅地」「田」「畑」「山林」などにわけられます。
取得財産価額として最も大きいのはやはり宅地で、他の種別よりも一桁大きな価額となっています。
そして畑、田、山林の順に大きな価額であることがわかっています。
なお、これらの価額の計算においては、各土地における借地権や耕作権、永小作権も含まれています。これらも相続財産になるということは理解しておくと良いでしょう。
現金・預貯金は相続財産の33.9%を占める
相続対象となる財産として2番目に主要といえるのが「現金・預貯金等」です。
全体の33.9%を占めます。
土地とは逆に平成23年から割合を増してきており、平成23年時点で24.4%であったのが令和元年では33.7%、そして最新のデータでは0.2%さらに伸ばしたということがわかっています。
有価証券は相続財産の14.8%を占める
3番目に主要といえるのが「有価証券」です。
こちらは全体の14.8%を占めています。
令和元年と比べると0.4%減少していますが、土地や現金・預貯金等と比べて有価証券は特徴的な増減の傾向は見られず、年によって増えたり減ったりしています。
ただし、平成23年から令和2年までのデータからは、12.2~16.5%の範囲内に収まることがわかっています。
有価証券は、さらに「株式・出資」「公債および社債」「投資・貸付信託受益証券」に分類できます。
もっとも大きい割合を持つのが株式・出資です。
取得財産価額で見ると、他より一桁以上大きいことがわかります。また、株式・出資は、「特定同族会社」に対するものかどうかで分類することもできます。
特定同族会社を簡単に説明すると、「特定の親族などが経営する会社のうち、ある特定の株主等による持株割合等が過半数である会社」といえます。
課税上、特別税率が適用されるなど扱いが異なるため、分けて考えることがあるのです。
株式・出資全体のうち3分の1ほどを特定同族会社によるものが占めています。
家屋は相続財産の5.3%を占める
4番目に主要といえるのが「家屋」です。
土地と家屋は同じ不動産としてセットのように捉えられることもありますが、相続財産の金額構成から見ると、占める割合は大きく異なっています。令和2年において土地が34.7%を占めているのに対し、家屋は5.3%です。平成23年から家屋が占める割合は5%台にとどまっており、こちらは有価証券よりもさらに変動が小さいという特徴があります。
その他の財産が11.3%を占める
上に挙げた主要な財産以外をまとめた割合が、残りの11.3%です。
例えば、「事業用財産」として相続対象になる「機械器具」「農耕具」「じゅう器」などです。他にも、「商品」「製品」「半製品」「原材料」「農産物等」、さらに「売掛金」なども事業用財産として相続の対象になります。
事業に係らない、個人でもよく問題になるものとして、「生命保険金」や「退職手当金」なども比較的大きな割合を占めています。
また、マイナスの財産になりますが、「債務」や「葬式費用」なども相続の対象になることを知っておきましょう。申告された取得財産価額を見ると、債務は生命保険金や退職手当金などよりも大きな額であることがわかります。
相続ではプラスのみならずマイナスの財産についても検討しなければなりません。特に相続を承認するかどうかの判断にあたり、債務額はよく調査することが大切です。